「日本の「安心」はなぜ、消えたのか」山岸俊男
一部書店では売り切れ御免、と聞いていたけれども、本当に有隣堂で売り切れだったのに遭遇して、ああ、山岸俊男ってそんなにいろんなひとに読まれてるんだな、と実感した。本の中では、日本の社会について危惧するような表現があるのだけれど、うん、この本がこんなにたくさんのひとに読まれてるならばなんとかなるのかな、とも思ってしまう。
とは言うものの、山岸俊男の名前は一般にはなじみのないものなので簡単に説明を。山岸さん自身は社会心理学の研究をしている学者で、「信頼の構造」という著書のなかで、人が信頼するということを、文化という飾りを取っ払い、人間の普遍的な心の性質について鋭い考察を加えている。
「安心」と「信頼」というのをきちんと区別して考えましょう、というのが「信頼」について研究されている山岸さんの姿勢だ。簡単に説明すると、村社会でいちいち玄関の鍵をかけないでいいのはお互いに「信頼」しているからではなく、村人同士で泥棒してもすぐにばれるし、バレて制裁が加えられるリスクを考慮すると村人同士ではどろぼうなんてしないしできないという「安心」からきてるんですよ。それは「信頼」とは違うんですよ。その証拠に、村人は部外者に対しては「信頼」なんてせずに、非常に排他的でしょ。ということだ。(全然簡単に説明できなかった。本書を読んでもらうほうがよっぽど分り易い)
山岸さんのおもしろいところは、「信頼」というような精神論に傾倒しそうなものを、科学的、数学的なアプローチで研究しているということだ。社会について述べたもので、これほどすっきりとする本は珍しいと思うのだが、そのわけはそこにある。
糸井重里さんが「
ほぼ日」でおもしろい、と書かれていたのでそれを引用します。
(2008年11月17日「今日のダーリン」より)
・北海道といえば、いままた、北海道大学の
山岸俊男さんの本を、おもしろく読んでいます。
もともと山岸先生の『信頼の構造』という本は、
「ほぼ日」の母とも言える存在で、
これまでにも『安心社会から信頼社会へ』などを、
強くオススメしてきましたが、
いま読んでいる『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』は
ぼくの気持ちに「ぴたっ!」ときまして、
ひざを打ちすぎて痛くなっちゃうくらい納得の本です。
「武士道」たの「品格」だのが、どうしてダメなのか、
説得力のある論を提出してくれてます。
また、お会いしたいなぁと思っています。
(2008年11月19日「今日のダーリン」より)
・先日、おすすめした山岸俊男さんの本、
『日本の「安心」はなぜ消えたのか』は、
どこでも売り切れになったしまったようです。
おそらく、この内容の理論を待っていた人たちが、
たくさんいたということだと思います。
たぶん、ですけど、いずれ重版になるでしょう。
この本、いまの時代にどんどん売れると思うもの。
http://www.1101.com/itoi_books/2008-12-07.html
最後に個人的に気になったことで閉めさせてもらいますと、山岸さんが「社会的知性」というのを強調して言うんですね。ひとが信用できるか判断する力なんてのを代表的にあげて。
「人を信じれるやつは「エラい」だ」というのを真っ正面から言われるような体験って、そんなにないと思うんですけど、この本をはそう言ってるんですね。
世間で言われている「常識」のウソって、いっぱいあるんだなって、そう思わされましたよ。