「愛するということ(原題:The Art of Love)」(エーリッヒ・フロム著)
1956年に書かれたこの一冊の本の内容が、まさに今のことだと思える。小説のように夢中になって読んだ。
題名くらいは聞いたことがある。著者のエーリッヒ・フロムの名前も、文系の学生ならよく聞くかもしれない。それでもなんとなく学生生活の2年間、読むことがなかった。図書館で手にした一冊が、古い訳で読みにくかったのかもしれない。
邦訳は「愛するということ」。少し照れくさくなってしまうほどの真っ直ぐなタイトルだ。その原題は”The Art of Love”、直訳すると「愛の技術」。本書では「愛するということは技術だ」と言っている。愛とは『落ちる』ものでも自然に発生するような受動的なものではない。愛とは自発的な行動なのだ、と。そして自発的な行動をするには技術を身につけなくてはならない、と。
フロイトの精神分析に、マックス・ウェーバーとカール・マルクスの理論を取り入れて、精神分析を社会的、哲学的、経済論的に発展させたのがフロムの理論だ。大学1,2年のころにフロイトに傾倒しつつあったおれにが、フロムに惹かれるのは、考えてみれば当然だ。
それにしても、フロイトで感じていた時代や社会の差による現代とのギャップが、これほど感じられないというのは驚きを隠せない。フロイトよりも新しいと言ったって、50年前に書かれた本なのに。
最近よく耳にするの「モテ」についてですが…
このごろ新書なんかで目につく「モテ」というキーワード。すでにフロムは50年前に言っている。恋愛に市場原理が働いている、と。誰かを好きになる、という個人的なことが、まるで市場であるかのように動向する。鋭い洞察だ。
こんなことしてたらいくら経済的に発展しても、いくら平和だといっても、息苦しい社会であっても何にも不思議じゃない。そんな風に考えてしまう。
「父性」や「神」についての考察も、フロイトを踏まえた上で安定した理論を展開している。性に傾倒しすぎたフロイトよりもこっちの理論の方が受け入れやすいかもしれない。どっちが優れているとは言えないけれども。
とにかくスゴい本。スゴい人、エーリッヒ・フロム。